ひとつの商品がすべての人のニーズを満たすことができないからです。
そこで、自店の商品を効率よく顧客へ届けるためには、ターゲットとする顧客に対し、どんな立ち位置でどうアプローチしていくか、ということを明確にすることが重要であり、そのためのワークフレームとしてSTP分析は有効です。
そこで今回は、STP分析の手順と注意点について解説していきます。
STP分析の手順と注意点
STP分析では、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングと呼ばれる3つの観点で分析を行っていきます。
それぞれどのような手順で分析を行っていくのか、順に確認していきましょう。
1.【セグメンテーション】市場のグループ分け
セグメンテーションでは、どこにポイントを置いて市場を分類するのかが重要となりますが、主に4つの指標が活用されています。
地理的変数
地理的変数は、国や都道府県などの立地的な要素から分類する方法です。
地域によって、気候や生活スタイル、文化などが異なりますので、自店の商品を提供する最適なエリアを特定するために活用されます。
日本以外の国では、宗教や政策を重視することも多いのですが、国内では差が出にくいことからあまり活用されません。
人口動態変数
人口動態変数は、年齢や性別、職業、学歴、家族構成など、人口統計データをもとに分類する方法です。
利用している商品やサービスの傾向は、消費ニーズと密接な関係があるとされるため、セグメンテーションでよく活用されます。
心理的変数
心理的変数は、ライフスタイルや性格、趣味などの好みを分析する方法です。
人口動態変数と比較すると内面的な情報となるため、アンケートを採るなどして調査をしなければなりませんが、ターゲティングするときに重要な情報となります。
行動変数
行動変数は、店舗での購買状況や製品に対する知識、興味の度合いなど、消費者の行動を分析する方法です。
例えば、ポイントカードから利用履歴や購入頻度といった顧客のこれまでの行動パターンで分類します。
2.【ターゲティング】顧客(ターゲット)の特定
セグメンテーションで市場を分類したら、次はターゲティングでターゲットとする顧客を絞り込んでいきます。
ターゲティングには次の3つのパターンがあります。
無差別型
無差別型は、セグメンテーションで分類した市場を特に意識せずに、不特定多数の顧客に対しアプローチする方法です。
効率よく多くの人にアピールすることができますが、顧客ニーズが多様化により、収益につなげるのは難しいという面があります。
差別型
差別型は、分類した市場にあわせて集客や商品展開を行う方法です。
顧客ニーズに合わせてアプローチができますが、分類した市場ごとに対応する必要があるため、無差別型よりもコストがかかります。
集中型
集中型は、分類した市場からいくつかに絞って集中して集客や商品展開を行う方法です。
幅広くアプローチできないものの、集中させることで商品に対する理解度を上げることができ、規模が小さい店舗でも対応しやすいという特徴があります。
3C分析と6R視点でターゲティングを補完する
市場の細分化とターゲットの特定において、精度を高めるために3C分析と6R視点を意識することも大切です。
3C分析で「市場規模」「競合状況」「自社の戦略」を分析してマーケティング戦略を立て、6R視点で評価します。
- 有効な市場規模
- 成長性
- 波及効果
- 到達可能性
- 競合状況
- 測定可能性
市場の規模や成長性を正しく分析することで、集中型で市場を選択するときに失敗が少なくなります。
ターゲティング時には上記の分析も行いながら、より精度の高い分析を行いましょう。
3.【ポジショニング】自店の立ち位置を決定
ターゲティングで市場の選択ができたら、ポジショニングで自店の立ち位置を決めます。
細分化した市場の中に、ターゲットとする顧客が多く存在したとしても、競合店が多いと、その中でポジションを確立していくのは、なかなか容易ではありません。
そこで、自店に有利なポジションを確立し、競合店との差別化を図っていくことが、STP分析におけるポジショニングの役割となります。
ポジショニングの基準
ポジショニングを行うときには、どこに基準を置くかが重要となりますが、次の6つの基準が、より優れたポジショニングを取るために利用されます。
- 商品の属性
- 商品提供によるベネフィット
- 商品の使用機会
- 競合との関係性
- 競合との距離
- 商品の種類別
6つの基準はどれかひとつだけということではなく、自店の商品に合わせて、複数を組み合わせて利用されることもあります。
ポジショニングマップの作成
競合店舗とポジショニングが被らないようにするために、ポジショニングマップを作成します。
ポジショニングマップとは、基準にする2つの項目を縦と横軸に据えて、自店や競合店の関係性を明確にしていく方法です。
例えば、「価格帯」と「商品の見栄えの良さ」を基準にした場合は、縦軸に価格、横軸に商品の見栄えを設定します。
このマップ上に競合店を配置し、競合店と差別化できる要因を特定することで、競合店と比べて優位性のあるポジションを導き出していきます。
STP分析を行うときの注意点
STP分析を行う場合は、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの順番で分析を進めていくことが最善ですが、必ずしもこの順番に従う必要はありません。
順番にこだわって分析時間が長くなってしまうよりも、効率よく作業を進めていくためには、順番を変えたり、前に戻ったりしてみるのも良いでしょう。
また、市場を選択するときには、市場の大きさも意識しましょう。
市場の規模が小さいと、どれだけニーズにあった商品を提供することができても、全体数が少なすぎては売り上げが伸びにくくなってしまいます。
まとめ
STP分析は、基盤となるマーケティング戦略を決定する重要な分析ツールです。
ここで決定された戦略は、今後、具体的なマーケティング戦略へと落とし込んでいくことになります。
自店の強みを生かし競合店より優位性の高いマーケティングを行っていくためにも、STP分析を活用していきましょう。